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2024.12.18 宮古の子どもたちとつくる 第三の居場所「みやっこハウス」~岩手県宮古市 NPO法人みやっこベース~

岩手県宮古市は、東日本大震災で沿岸部に大きな被害があり、420人もの方々が亡くなりました。震災から13年が過ぎ、直接目に触れやすい形での課題は少なくなりましたが、被災した地域特有の子どもに関する課題は今も残っています。

宮古市で子どもの居場所づくりを中心に活動を続ける「NPO法人 みやっこベース」の坂本紗綾さんに、現在の子どもたちの様子を伺いました。

※死者数は2024年2月NHK調べ

NPO法人みやっこベース 坂本紗綾(さかもと さあや)さん

1994年生まれ。岩手県宮古市出身。山形県立米沢女子短期大学卒業。高校1年生で東日本大震災を経験し、まちの復興に携わりたいという想いが芽生える。短大卒業後、宮古市のコミュニティFM局に勤務。業務の一環でNPO法人みやっこベースに出会い、高校生のラジオ番組制作を行った。その後、県外への転居を経て2023年にUターンし、みやっこベースに入職。主な事業担当として「みやっこハウス」の運営等を行っている。

東日本大震災後続く 子どもたちの体験格差や居場所の少なさ

震災から間もなく14年になります。街は復興し、人々の生活は日常に戻ったように見えます。しかし、震災による家庭や地域の状況の変化が、子どもたちの育つ環境に今も影響を及ぼしています。

例えば家庭においては、経済的に困難になり、子どもの体験の機会が減ってしまうことが見受けられます。子ども時代の学校外での体験は、問題解決力を養ったり、自尊心を育むことに繋がるなど、その後の人生においても影響するといわれています。

私たちは、家庭や学校と連携し、地域全体で子どもたちの体験機会を作っています。ハタチ基金の助成をいただき、毎月一回自然体験を行う「みやっこネイチャークラブ」を企画したり、年間を通して取り組む農業体験「みやっこファーム」を開催。農業体験は、親子で一緒に参加できる機会となっています。

「自由と興奮の波に乗れ!」シーカヤックの様子。
みやっこファームで収穫した野菜は、販売するところまで体験しています。

子どもたちと関わっていく中で、自分の気持ちや好きなものを伝えることが苦手な子どもが多いことが分かりました。その中には、家庭で親御さんに否定されることが多く自分の気持ちが言えなくなっていたり、友達との関係の中で嫌な思いをした経験がある子もいました。震災後の生活の変化によって、こうした状況下に置かれた子どもたちもいるようです。

私たちは、小学生から高校生までが気軽に集えるコミュニティスペース「みやっこハウス」をつくり、家や学校以外の第三の居場所となるよう、日々活動をしています。こちらもハタチ基金の助成によって実現することができ、子どもたち一人一人が自分らしく過ごすことができる場を目指しています。

JR宮古駅から徒歩3分の好立地にある「みやっこハウス」勉強や友人との交流、ちょっとした休憩など利用の仕方は自由。

みやっこハウスは平日の放課後と休日に開館し、子どもたちの居場所を提供しています。子どもたちは宿題をしたり、ボードゲームを通して他学年や他校の子どもと関わったりしています。みやっこハウスでは毎月イベントを行っていて、2024年5月~8月までは、宮古市の中心市街地の活性化に向けたアイデアを考えるイベントを行いました。

)高校生が関心のあることについて語り合う「みやパル~10代の喋り場~」の様子

最近では、みやっこハウスで「子どもスタッフ」をやりたいと言ってくれる小学生が出てきました。子どもスタッフには、みやっこハウス内の“もっとこうだったらいいのに”を解決する手助けをしてもらっています。例えば、忘れ物をする子どもが多くいるので、「忘れ物防止」のチラシをiPadで作成してもらい、掲示するようにしました。他にも、小学生の企画で交流イベントを行いました。

 「学校や家にいるよりもここにいる方が楽しい」と言ってくれている子がいて、みやっこハウスが居場所になっているなと実感しています。子どもたちのチャレンジを見守る中で、「そういうことにもチャレンジしていいんだ」と気づいてくれたこともあります。一回の活動で終わるのではなく、次はこうしたいという意欲や向上心につながっているなと感じました。

中学生と「みやっこタウン」の企画についてアイデア出しをする様子。

産業や地域の衰退を逆手にとって 子どもたちの挑戦の場に

東日本大震災後の度重なる自然災害や、コロナによる経済的な落ち込みなどで、産業や地域の衰退はますます進んでいます。産業や地域の衰退など暗い話が地域に蔓延してしまうことで、子どもたちにとって明るい未来を描きづらいという現状を作ってしまっています。

こうした課題をチャレンジのきっかけとし、高校生が地域を良くしたいという意欲にもつなげています。その一つ、高校生・短大生を対象とした学校外のボランティアサークル「地域活動部」 地域のお祭りで出店をしたり、街歩きを通して地元について理解を深め、商店街の方々と意見交換をするなど、地域の大人との交流の機会が増えています。

地域活動部の定例ミーティング。高校生と坂本さんが、ラジオ番組制作について打ち合わせをする様子。

また、今年度の活動として、コロナ禍で倒産した駅前の商業施設の再開発に向けて、小学生から高校生までが集まって話し合いを行いました。地域の衰退などを「仕方ない」ことだとせずに、「自分たちにもできることがある」と当事者意識を持って街の未来を考えるきっかけになっていると感じます。これを機に、ここで生まれた自分の人生もより良くしていくという意欲や希望につながれば嬉しいです。

みやっこハウスで出会った高校生同士が自己紹介をする様子。

全国の「居場所づくり」のスタンダードに

日々、子どもたちと接する中で、みやっこハウスが第三の居場所になっていると感じます。

また、県外からみやっこベースの活動を視察に来ていただく機会もあります。間接的ではありますが、これまで行ってきたことが全国の子ども支援のより良い形につながっていれば幸いです。

学校の先生や親には言えないことも、みやっこハウスの大人なら言えると言ってくれる子どもたちもいます。誰かに相談する前に諦めてしまったり、もしかしたらその子の能力を伸ばすきっかけになっているかもしれないチャンスを逃さないように。第三の居場所として、子どもたちのよりどころになることが必要だと感じています。

みやっこベースは東日本大震災がきっかけで活動が始まりましたが、こうした居場所は、被災地に限らず、全国の子どもたちにとって必要です。この取り組みが、スタンダードな世の中になるように。私たちは継続して活動を続けて参ります。今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。

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NPO法人みやっこベースの活動に関してはこちらのnoteをご覧ください。