2021.01.14
ハタチ基金の助成先団体の一つ、認定NPO法人底上げ。助成を利用して、福島県楢葉町に子どもたちが自由に表現をしたり、遊びや学びを実現できる「ならはこどものあそびば」をつくりました。開所から2年、あそびばを中心に子どもたちや地域の人たちに小さな変化が。活動を続ける日野涼音さんに、現在の子どもたちの様子を伺いました。
認定NPO法人底上げ 日野 涼音(ひの りょう)さん
1999年生まれ。山形県山形市出身。東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科卒業。2019年に福島県楢葉町のまちづくり会社でのインターンシップに参加し、福島の現状や楢葉町の魅力を発見。その出会いを通じ、もっと近くで楢葉町の歩みや楢葉の人々の生き方を見ていきたいと思うようになり、2021年に移住。現在は、福島県双葉郡、楢葉町を中心に、評価にとらわれず自分の気持ちを表現できる「あそびば」の活動を行う。
一度は住めなくなった地域で生きていく 子どもたちを取り巻く課題
福島県楢葉町は、震災から4年半の間、全町民避難を余儀なくされた町です。周辺の地域では、今も居住できない区域があります。そんな中、子育て世帯が帰町・移住をし、子どもたちの数も増えてきました。しかし、習い事の数が限定されていたり、子ども支援を行う団体が町内に無いなど、子どもたちの選択肢が少ないのが現状です。子どもたちが自由に選択し、自由に遊んだり学ぶことがしづらい状況が、この町の課題だと感じています。
あそびば開所から2年 地域の大人たちの協力が子どもたちを育む
楢葉町内に子どもたちが自由に動ける選択肢を増やしたいと考え、ハタチ基金に助成をいただいて、2022年に「ならはこどものあそびば」を開所しました。子どもたちの放課後の居場所兼遊び場です。
あそびば内で行われる企画は、子どもたちの“やってみたい”をみんなで後押し、子どもたち発信のものを実現できるように心がけています。自分の好きな遊びをしながら、異年齢の子どもたちが協力したり、ぶつかり合いながら毎日過ごしています。
最近では、地域の方々に暖かく見守っていただいている実感があります。散歩途中に声を掛けてくださったり、工作の材料になるものを集めてくださったり、差し入れをいただいたりと、周辺の地域の方々と一緒にならはこどものあそびばをつくっている感覚です。子どもたちの環境を整えるためには、地域の大人の関わりも重要だと考えています。だんだんと協力してくださる方々が増えているのはとても嬉しいです。
今年度は、大学生インターン1名が半年ほど長期で関わってくれています。楢葉町には中学校までしかないため、小中学生は、先生や保護者以外の年上の存在と交わる機会がほとんどありません。
大学生は、子どもたちにとって刺激的な存在となっています。子どもたちのやりたいことを聞きながら関わる一方で、地域の方々との繋ぎ役になってくれたり、独自の企画も実施してくれています。
最近では、「近所の金木犀を探そう!」と大学生が声を掛けてくれたことをきっかけに、「金木犀調査隊」が発足。あそびばの近所に繰り出して、普段子どもたちが見ることの無い視点で地域を見るきっかけになりました。
学校の授業でやったことがあることや、動画で見たことのあるものから着想得ることが多かった子どもたちですが、“新たな存在”が新しい世界を広げるきっかけとなることも期待しています。
ならはこどものあそびば開所から丸2年を迎え、初めて子どもたちがあそびばに来た時から色々なものが変化しました。子どもたちの表情・発言、あそびば内の雰囲気、遊びの種類。起こったことを一緒に笑って楽しみ、できないことややりたくないこととも向き合い、友だちと意見を話し合う姿が見られるようになりました。異学年同士、同学年同士など、様々な形で交流をする子どもたちの姿を見て、学校や家庭以外の“人と人が交わり合える空間”が必要だったのだなと感じています。
震災からもうすぐ14年 今も子どもたちの支援が必要な理由
全町避難を経験した楢葉町の子どもたちを取り巻く環境は、震災後から大きく変化はしていません。今、始まったばかりという実感があります。地域の方々の顔が見えるようになってきたり、子どもたちの選択の幅が広がってくるなど、一歩一歩ですが良い方向には向かっているように感じています。
子どもたちには、学校でもなく家庭でもない居場所や関わってくれる大人たちが必要で、まだまだ少ないのが現状です。
また、この活動を着実に行なっていくことが、町内だけではなく、町外の子どもたちにも選択肢が広がる第一歩だと考えています。あそびばに通っている子どもたちの、これからの成長を見守っていくのが楽しみです。
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