2021.06.23
作曲家でピアニストの高柳寛樹さんとオカリナ・カリンバ奏者の堀田峰明さんが毎年開催する「『ハタチ基金』 チャリティーコンサート」
このコンサートは、東日本大震災が発生した2011年からスタートし、今年で12回目となりました。2012年からは、コンサートの収益は全てハタチ基金へご寄付してくださっています。
今年も、お二人の音楽を楽しみながら、被災した地域や子どもたちに思いを馳せる、貴重な時間となりました。
2023年12月、東京都内の会場で開催された「『ハタチ基金』チャリティコンサート」
コロナ禍でオンライン開催が続いていましたが、今年は4年ぶりにお客さまに直接お会いして音楽を楽しんでいただく機会に恵まれました。会場で聴くピアノとオカリナの美しい音色によって、心温まる時間が流れました。
そして今年は新しい試みも。ハタチ基金が助成する団体の卒業生・高木桜子さんが歌で参加しました。きっかけは、高柳さんが高木さんのインスタグラムに投稿された歌を聞いたことでした。こうしたコンサートで歌うことは初めてだったこともあり、高木さんは少し緊張した様子でした。
コンサートの中盤、ハタチ基金代表の今村が震災直後に被災地で子どもたちと話したことや、その後の活動を経て感じていることなどをお話しました。
震災当時、避難所の子どもたちは、毎晩8時過ぎの就寝を余儀なくされていました。そんな中で、受験を間近に控えた中高生もいて。被災したからって受験は待ってくれない。焦りと諦めの中にいる子どもたちに対して、勉強や挑戦したいことができる環境をつくろうと被災地支援の活動を始めました。全国からのボランティアの方々や、地域で塾の講師をしていた方などにお願いをしてチームを組んで「居場所づくり」を始めたのです。岩手県大槌町でもこうした場をつくりましたが、今日ここにいる高木桜子も、当時は中学生でその場所に来ていました。それが彼女との最初の出会いでした。
私たちにできることは少ないけれど、安心できる場の提供と、震災での経験が次の未来へとつないでいけるように。子どもたちの伴走を続けてきました。
子どもたちの心の傷は長期間に渡って関わらないと見えてこない部分もありました。その瞬間は元気になったということがあるのかもしれませんが、その後どのようなことが子どもたちに影響を及ぼすのかわからないということを前提に、同じ思いをともにした団体にも声をかけて、ハタチ基金を立ち上げました。長く子どもたちをみていくためには、寄り添える大人の存在とたくさんの方々からの寄付が必要だったからです。
震災から10年の節目のときに、ハタチ基金の活動方針を変えました。東北の若い世代や、地域の未来を自分たちでつくっていきたいという大人たちを応援するという方針です。
高木桜子も含めてその世代が大人になって、地元東北に帰って何かをしたいという子もたくさんでてきています。あのとき自分がしてもらったことを、地元で恩返ししたいという子も多いです。東北で子どもや若者の支援をする団体や支える大人たちが継続して活動を続けられるように。2023年は、13団体を助成という形で支援しています。
今日のコンサートでは、あの被災経験をした高木桜子にお二人との新しい出会いがあって、その出会いのおかげで新しい経験をすることができました。このことは、震災が起きてしまったことへのひとつの報いだと思っています。私たちも東北の子どもたちや若い世代と向き合い続けながら、残りの活動期間を頑張っていこうと思います。
そして、高木さんは、当時の被災体験と皆さんに伝えたい大切なことをお話しました。
あの日は早帰りの日で、学校から帰宅していたときに震災が起きました。
津波が街をのみこんでいき、燃え盛る炎は自分にも燃え移るのではないかと思うくらいに激しく、怖かったのを覚えています。ついさっきまでお喋りを楽しんでいた友人が津波で流されたことを、震災から数日経ってから聞きました。
私は幼い頃から親から「津波てんでんこ」と度々言われながら育ちました。津波が絶対に来ると言われる地域に住んでいたからです。津波が来た時は、自分のことだけ考えて、他の人のことは考えなくていい。「てんでんこ」というのは、てんで散り散りになって逃げることを意味します。
皆さんはご家族で、まずは避難場所を確認して、地震が起きたらてんで散り散りに自分のことだけ考えて避難してほしいです。
会場では、高木さんのお話と歌に涙を流される方もいらっしゃいました。
東京の地から東北に思いを寄せる特別な日。素敵な音楽と演奏後の食事会での歓談をともにして心温まる一日となりました。
コンサートを毎年企画してくださる高柳寛樹さん、堀田峰明さん、そしてコンサートにお越しくださった皆さん。子どもたちへのご寄付と思いに心より感謝いたします。
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