2022.12.22
助成先団体の活動内容や被災した地域の子どもたちの今の課題をご紹介する連載シリーズ。
今回は、福島県南相馬市で、子育てに課題を抱える家庭や子どもたちを支えている「NPO法人トイボックス」です。
現場で子どもたちと接しながら、地域特有の課題と向き合う、トイボックススタッフの佐藤 勇介さんに活動の様子と子どもたちの今を伺いました。
NPO法人トイボックス 南相馬事業部 佐藤 勇介さん
福島県南相馬市出身。子どもと接することが好きで、地域の子どもたちとの交流を深め、居場所づくりを一緒に行いたいと考え、2022年からトイボックスで働く。児童クラブでの児童支援や南相馬事業部の事務を担当。入職から1年を経て、新しいことにもどんどんチャレンジしていきたいと考え活動している。
原発事故による避難の長期化が招いた 子どもを支える人材の不足
どの地域にも、子どもの発達に関わる課題や不登校、生活に困窮する世帯など、子どもたちをとりまく課題はあると思います。しかし、福島県内各地域やここ南相馬市は、東日本大震災や原発事故による避難生活が長期化したため、この地域特有の問題もいまだに山積しています。例えば、もともとあった地域を支援するためのリソースが多く流出してしまったことと、避難できずに他の地域から戻ってきた家庭の中に比較的子育てに課題を抱える家庭が 多かったこと、この二つの課題が重なり、現在この地域ではサポートを必要とする子どもたちの数に対し、支援者の数が絶対的に不足しています。特に、児童支援員、心理や福祉の専門家は不足していて、人材育成や確保が急務となっています。
そんな現状の中、児童クラブの利用人数を制限せざる負えない状況にも陥っています。
子育てに悩む家庭と繋がり 専門家が支えていくために
皆さんからのハタチ基金へのご寄付のおかげで、私たちは、児童クラブを2か所と子どもの居場所施設を運営しながら、子どもたちを持続的に支援し続けられる地域体制の構築と人材の育成を行うことができています。
子育てに課題を抱える家庭の多くが、相談先がないことや相談の仕方がわからないことで困っているという状況にあります。一方で、放課後等デイサービスなど児童福祉施設とそこで働く専門スタッフが不足している課題もあります。そこで、放課後児童クラブが多機能化し、相談支援の一部も担えるようにすることで、人材不足を補えるようにしています。地域内だけでは、研修や人材育成は難しいため、トイボックスの本部から人を派遣したり、本部で研修を受けられるようにすることで人材育成も進めています。
また、他の児童クラブで受入れが困難な課題感の強い児童の受入れや、預かり以外の子育て支援にも取り組んでいます。地域の中には支援を必要としていながらも公的支援とうまく繋がっていなかったり、「子育てのサポート」や「相談支援」という言葉に抵抗感がある家庭もいます。
そこで、行政と連携しながら「つながり」と「仕組み」を作っています。保護者同士や保護者と支援団体の多様なつながり、行政と支援団体のつながり、人材を持続的に確保する仕組みの構築です。それらの家庭も親子で気軽に参加できるようなイベントを開催し、地域の子育て世代とつながるきっかけにしています。
私自身は、ただ居場所を提供するだけでなく、成長過程でのルールの守り方を覚えることや、自分でやりたいことを見つけてやってみることで自己肯定感を高く保てるようにすることも大切にしています。子どもたちと日々接する中で、それぞれに合った支援ができるようにしていきたいです。
寄付者の皆さんへのメッセージ
いつも支えてくださってありがとうございます。 この活動をする中で一番大切にしていることは、子どもたちの未来を豊かなものにすることです。 支援者一人一人ができることは限られていますが、アイディアは無限に出てきます。一方で、支援者の数が絶対的に不足している問題については現状も解決していません。そのため、大阪の事業部と連携し臨床心理士を交えたミーティングを定期的に行い、児童クラブでどのような問題があり、解決するには何ができるのか、対応の仕方などのアドバイスをもらいながらスタッフのスキルアップにもつなげています。
子どもたちを持続的に支援し続けられるよう、地域体制の構築と人材の育成を中心に、トイボックス一同力を合わせて頑張っていきます。