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2023.09.20 避難所では後回しだった“子どもの居場所” 大人の目を気にしないで遊べる場をつくっていく(NPO法人 にじいろクレヨン)

助成先団体の活動内容や被災した地域の子どもたちの今の課題をご紹介する連載シリーズ。

今回は、宮城県石巻市で、震災直後から子どもたちの居場所づくりを行っている「NPO法人にじいろクレヨン」です。

避難所で過ごす子どもたちのために活動をスタートしたにじいろクレヨン。以来、12年以上子どもたちの居場所づくりを続けています。

代表の柴田滋紀さんに活動の様子と子どもたちの今を伺いました。

NPO法人にじいろクレヨン 代表 柴田滋紀さん

画家。お絵かき教室「ゴコッカン」運営。石巻市出身で自身も被災。避難所生活を送る中、子どもたちが大人に気を遣って思い切り遊べず辛そうにしている様子を見て、2011年3月22日に「石巻こども避難所クラブ」を結成。思い切り遊べる場づくりを行った。その後「にじいろクレヨン」と改称し、ボランティアとともに仮設住宅で子ども向けのレクリエーションを開催するなど、子どもを主体とした地域のコミュニティづくりを行っている。現在は市内に拠点を構え、幼児や放課後の小学生など、どんな子どもたちでも集える居場所をつくっている。子どもたちからの愛称は“おんちゃんししょう”。

避難生活の中失われていった 子どもがのびのびと遊べる場所

震災直後、避難所の子どもたちは、我慢を続けてとてもストレスがたまっているように見えました。震災前に私は子ども向けのお絵描き教室も開いていたため、そんな子どもたちを見て自分にできることは子どものケアなのかなと思い「石巻こども避難所クラブ」をスタートしました。大人たちは生活していくために大変な状況にあったので、遊んでくれる大人が現れて、みんな生き生きとし始めたのを覚えています。

そんな子どもの生きる権利、育つ権利、参加する権利が後回しになったあの日の状況が、今もこの地域では続いているように感じます。震災時に子どもの権利が保障できない状況だったため、そのまま理解が進んでいないのかもしれません。

現在、石巻市には児童館が1つしかなく、空間的にも時間的にも子どもたちがのびのび過ごせる場所がほとんどない状況にあります。それに伴い、子どもに携わる大人たちも少なく、地域としても見守りが薄いです。避難所から仮設住宅、復興公営住宅へと移り住むことを余儀なくされ、地域の繋がりが薄いことも影響していると思います。

子どもたちは、学校や塾、習い事など、大人に決められた活動の中で生きている子がほとんど。そのため、自分たちが主となって遊びや活動をすることのできる場が保障されていません。子ども達の声から活動が生まれることもあるのかもしれないが、ほとんど耳にしないのが現状です。

大人の目を気にせず思い切り遊ぶ経験が 地域への愛情につながる

にじいろクレヨンでは、活動拠点となるにじいろ農園を中心として、子どもたちが自分でやりたいことを誰にも邪魔されずに楽しめる環境をつくっています。

放課後、農園の水たまりで泥遊びをする小学生。柴田さんやスタッフの方たちが笑って見守る。
ヤゴを捕まえた小学生。
収穫した黒トウモロコシ。

野菜を育てて収穫をしたり、地域の集会所に行って季節の行事を行ったり、造形をしたり、保護者や学校の先生ではない地域の大人たちと一緒に楽しんでいます。そうすることで、自然と子どもたちと近所の人たちとの接点ができたり、近所の人たちもそこにいる子どもと触れ合うことで、寛大な気持ちで見守ってくれるコミュニティができるのではないかと考えています。

この活動を続けている中、心に残った出来事があります。ある小学生が、自らが企画した「ヒーローショー」を開催。自分でステージを作り、チケットを作り、チラシを書き、宣伝をしました。私たちスタッフは意見を出すことなく、ただただ見守り役となって。その時の彼の生き生きとしている姿を見て、これが本来子どもが持っている力だと感じました。

子どもや保護者からの声を大切にしながら活動をしていく。自分たちで作っていった活動は子どもたちの心にも残ることでしょう。また、地域への愛着や市民性を育むことにも繋がって行くと考えています。私たちは、子ども自身の意見が尊重される社会になっていくことを願って活動を続けています。

農園では水遊びも。ふらっと立ち寄って遊ぶことができる気軽な場となっている。

寄付者のみなさんへメッセージ

今回、ハタチ基金からの助成のおかげで新しいプログラム「にじいろ農園 ハッピーマンデープロジェクト」を実現することができました。毎週月曜日、子どもたちが大人の目を気にせずに、のびのびと遊んだり、アート活動をして過ごしたりできる場所となることを目指しています。加えてこの機会に、子どもの権利への理解を促す、地域住民向けの研修会や勉強会を2回開催する予定です。 

皆さまの寄付によって活動を継続することができています。活動を継続することが何より難しく、大切なことだと思っています。ありがとうございます。

私たちはあくまでも子どもたちの代弁者であり、子どもたちが持っているものを邪魔しないように活動しています。それにより、直に子どもたちの声や思いを聞き、皆さまに届けることができると思います。これからも末永く応援をよろしくお願いします。

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