2014.09.10
助成先団体の活動内容や子どもたちの今の課題をご紹介する連載シリーズ。
今回は、宮城県、岩手県、福島県の経済的困難を抱える家庭の子どもたちに、地域の学習塾や習い事等で利用できるスタディクーポンを提供する「公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン」です。
チャンス・フォー・チルドレンの活動を支えるのが、大学生ボランティア。その一員として在学中に子どもたちに寄り添い活動に参加した経験を持つ、仙台事務局の近藤有希さんにお話を伺いました。
チャンス・フォー・チルドレン 仙台事務局 近藤有希さん
青森県出身。震災当時は高校生。青森でテレビやラジオで被災地の状況をみて、同じ東北に住んでいるにもかかわらず、自分には何も出来ず悔しい思いを抱える。被災地支援のボランティアに参加したいと思い続け、大学時代に、チャンス・フォー・チルドレンの大学生ボランティア「ブラザー・シスター(ブラシス)」の一員として参加。スタディクーポン利用家庭の子どもと面談を行い、クーポンの利用相談や進路相談等に乗る。大学卒業後は一般企業に就職したため、一度活動を離れたが、2018年チャンス・フォー・チルドレンの職員となる。
■震災の影響が今の課題へと繋がる 長期で支援が必要な被災地の子どもたち
チャンス・フォー・チルドレンは、東北の被災した地域で経済的困難を抱えるご家庭の子どもたちに、学習塾や習い事等で利用できるスタディクーポンを提供する事業を行っております。
私たちがクーポンを提供するご家庭の中には、自力でクーポンの利用先を探していくのが困難なご家庭もあります。そのため、ただクーポンを提供するだけではなく、そのようなご家庭に対し利用先の相談や提案をすることで、子どもたちがやりたいことに挑戦できるようなサポートも行っています。
また私たちの活動には、面談を通じて子どもたちの自由な意思決定を支える役目を担う大学生ボランティアの存在が欠かせません。そのため、大学生ボランティア向けの研修の企画・実施や、彼らの活動の日常的なサポート等も行っています。
東日本大震災から12年が経過し、当時被災した地域は少しずつ復興に向かっている一方、子どもたちを取り巻く環境や課題はより複雑化しています。
私たちが支援する子どもたちの中には、家庭の経済的な問題だけではなく、不登校や家族間の不和や疾病等、様々な問題を抱えている子どもたちも多くいます。最近では特に、不登校の子どもたちに関する相談や情報共有を受けることが多くなっているように感じています。
震災をきっかけに、ある疾患を発症したお子さんもいらっしゃいました。そのお子さんはご自身の疾患を抱えながらも、経済的に困窮していたためアルバイトを始めたのですが、アルバイトの多忙さと体調不良が重なったことから不登校気味になっていきました。学校に通うことが精一杯だったため、クーポンを利用して新しいことを始めることはできていませんでしたが、それでも本人からは、「頑張りたいけれどお金がないし、体力も気力もない。でも頑張りたい」という言葉が繰り返し伝えられている状況でした。
■“年の近い大学生ボランティア”が子どもたちの本音を引き出す
このお子さんの場合は、周囲の大人には相談が出来なかったことも困難の要因となりました。事務局が困っていることを把握することに繋げたのは、お子さんと年の近い大学生ボランティアでした。お子さんが大学生ボランティアのことを信頼し、自分の味方だと思っているからこそ、胸の内を明かしてくれたのだと考えています。
その後大学生ボランティアには、お子さんが思っていること、感じていることを吐き出せる場所と時間をつくること、本人がやりたいと思うことに対して、否定せずに寄り添うことを意識して面談をしてもらうようにしました。
お子さんはご自身の決断のもと別の学校に編入し、環境を変えたことで楽しく学校に通えるようになったそうです。新しい学校では、部活で興味のあったスポーツに取り組み始め、クーポンもスポーツ教室で利用したいという意向を伝えてくれました。同時に、大学進学に向けてクーポンで学習塾に通うことも考えています。大学生ボランティアとの面談の中でも、自分のやりたいことや将来の夢をたくさん話してくれるようになりました。
子どもたちが抱えている問題は一つではなく、複数抱えている問題が複雑に絡まり合っていることも多く、全てを一度に解決することは難しいかもしれません。しかし、このお子さんの事例を通して、抱えている問題の何かひとつでも解決することで、お子さん自身が「もっとこうなりたい」「こういうことがしてみたい」と思えるようになり、解決に繋がっていくこともあるんだと感じました。
■寄付者の皆さんへのメッセージ
近年は、新型コロナウイルス感染拡大や物価高の影響等により、多くの子どもたちが「あたりまえ」とされていた学校生活、日常生活を送ることができず、友人関係や家族関係等の様々な問題が新たに発生してきているのではないかと感じています。
そのような状況下でも、大学生ボランティアと協力しながら子どもたちやそのご家庭に寄り添い、子どもたち自身が望む将来に向けて歩んでいけるよう、適切な支援方法を模索しながらサポートしていきたいと思っています。
今後とも変わらぬご支援・ご協力のほど、どうぞ宜しくお願い致します。