2018.01.25
2011年3月11日に起きた東日本大震災。あの日からもうすぐ12年が経ちます。ハタチ基金も震災の発生直後から活動を始め、時を経て変わる被災地の課題と向き合う団体を寄付者の皆様とともに支えてきました。
2022年に加わった助成先団体の多くは、地域密着でそれぞれの場所での子どもたちを取り巻く課題を一つ一つ拾いながら解決へと導くために活動をしている団体です。現地で活動する団体スタッフたちに、東日本大震災にどのような思いを寄せているのかを改めて伺い、震災から12年目を迎える東北の現状について連載企画にまとめてお届けします。
第一回目は、岩手県宮古市で活動するNPO法人みやっこベース。自身も被災経験があるスタッフの八島彩香さんのお話をご紹介します。
NPO法人みやっこベース
震災後に地元の高校生たちが始めたボランティアをきっかけに活動をスタート。2013年団体設立、2015年NPO法人化。宮古市の子どもや若者が自分らしい価値観を育みながら、前向きな希望と意志を持つことができる地域づくりを目指し、地域での活動の機会を提供する場を作っている。子どもたちの居場所や交流の場となる街中のフリースペース「みやっこハウス」、小学生向け社会体験プログラム「みやっこタウン」など地域の魅力に触れる機会にも力を入れている。
ーー3.11は八島さんにとってどのような出来事だったのでしょうか。
私にとって震災は、進むべき道が見えた出来事でした。
震災が起きたのは中学3年のときで、卒業式を目前に控えたタイミングでした。自宅は半壊認定を受けましたし、家族も私も避難生活を送る中片付けに追われていました。そんな中、これまで意識をしていなかった地域の人との繋がりが目に見えるようになって。みんなが助け合いながら、コミュニケーションを取る機会が一気に増えて、人と人との繋がりやそのあたたかさに感銘を受けました。
インフラが復旧し日常を取り戻しつつある中、高校入学が1ヶ月遅れたこともあり、私は時間を持て余すようになりました。自分自身も被災した身ではありますが、「自分も人のためになることをやってみたい」と思うように。でも、何をすれば良いのか、どこに行けばできるのか、当時は何もわからない状況でした。勉強と部活だけでは面白くないから何かしたい。そう思っているときに、みやっこベースと出会いました。
みやっこベースでは、自分たちが考えたアイデアを地域で実行できるように大人たちがサポートしてくれました。商店街のマップづくりなど地域に少しでも貢献できるような活動を行う中で、消極的で控えめだった自分の性格もどんどん積極的になっていったように思います。また、自分がやりたいことは「コミュニティデザイン」や「まちづくり」に関わる仕事だということにも気付くことができました。
学校と自宅の往復だけではできないこの経験を、次世代の後輩たちにも繋げていきたい。そんな想いから、将来みやっこベースで働くことを目標に、視野を広げるため県外の大学に進学し、その後就職もしました。2022年春、8年ぶりに宮古にUターンをして、現在みやっこベースのスタッフとして働いています。
ーー活動を行う中で、今現在感じている地域の課題はどのようなものでしょうか?
宮古では、みやっこベースのOBOGをはじめ、震災当時小中学生や高校生だった若者たちがUターンをすることも増え始めています。地元の企業に就職をしたり、中には個人事業を立ち上げる若者も。先々Uターンを検討している若者も多くいるように感じています。一方で、コロナ禍でのリモートワークであったり、副業やフレックスタイムの導入など、新しい働き方ができる企業が少ないと感じています。地域の担い手が増えていく希望がここにあると信じて、こうした若者たちを支えられるように活動をしていきたいです。
ハタチ基金は、「東日本大震災発生時に0歳だった赤ちゃんが、無事にハタチを迎えられるその日まで」をコンセプトに、2011年より活動をスタートしました。2023年3月に12年目を迎え、残りの活動期間は8年となります。東北被災地の団体が、ハタチ基金活動期間終了後も子どもたちを持続的に支え見守れるように。そんな思いで、これからも皆さまからのご寄付とともに支援を続けてまいります。よろしくお願いいたします。
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