ハタチ基金の助成団体のひとつ、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン。塾・予備校・習い事などの教育サービスに利用できる”スタディクーポン”を被災した子どもたちに無償で提供し、学習の機会を増やしています。
2020年6月20日をもって、チャンス・フォー・チルドレンは法人設立から9年を迎えました。今回は、チャンス・フォー・チルドレン 奥野慧代表理事より寄付者の皆さんへメッセージが届きましたのでご紹介します。
みなさまの温かいご支援により、これまで延べ3,269名(2020年3月時点)の子どもたちにスタディクーポンを届けることができました。心より御礼申しあげます。
法人設立から9年が経ち、25歳だった私は34歳になりましたが、歳だけでなく多くの変化があり、その中でも変わらないものがあったように思います。
■クーポンを届けられる子どもたち
東日本大震災から半年が経った2011年9月。東北で初めてクーポンを提供するため、子どもたちの募集を行いました。
結果的には150名の定員枠に対して1,701名の応募が殺到し、ほとんどの家庭には落選通知を送ることになってしまいました。
今でも忘れることができない悔しい経験で、応募された方々には申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。ただ、この経験こそが、寄付に加えて事業を政策化していく必要性を強く実感させた出来事でもありました。
あれから9年が経ち、寄付を原資とした自主事業では3倍以上の子どもたちにクーポンを提供できるようになり、また、5つの自治体では政策として事業が実施されるようになりました。少しずつですが、すべての子どもに学びの機会が提供される社会の実現に向けて歩んでいます。
■多様な選択肢
子どもたちの募集を開始した2011年9月。この時点でクーポンの利用先はまだ1件もありませんでした。そこから12月1日の利用開始までの間、まずは150名の子どもが利用できる場所を確保する必要がありました。この時の教育事業者の多くは、自分たちも地震や津波で大きな被害を受けた方々でした。また、何より何の実績もない若造たちの“クーポンという怪しげな仕組み”を信じてくれる方は、正直少なかったように思います。
しかし、奇跡的にもこの仕組みに共感し、私たちを信頼し、応援してくれる方々に出会えたことによって、その後クーポン利用先は順調に増えていくようになりました。あれから9年が経ち、現在クーポンが利用できるところは1,400件(2020年5月時点)になりました。スタディクーポンの特長の1つは、ニーズに合わせて利用先を選べるところにありますので、今後も多様な選択肢を提供できるよう励んでいきます。
■大学生ボランティア「ブラザー・シスター」
子どもたちやクーポン利用先の募集を開始した2011年9月。子どもたちと面談をする大学生ボランティア「ブラザー・シスター」(ブラシス)もまだ1人もいませんでした。そこから、仙台市中の大学を回ってチラシを配り、初めてのブラシス45名が集まり、子どもとの面談がスタートしました。
9年が経った今も当時と変わらないのは、学生たちが共に学び合う環境です。チャンス・フォー・チルドレンでは、研修の企画運営、ミーティングの開催、面談の振り返りなどをすべて学生自身が担い、学びをシェアしていくことを大事にしてきました。これは、ブラシスがサービス提供者という側面だけでなく、この活動に関わることで成長していくことが大切だというチャンス・フォー・チルドレンの価値観があるからです。また、今でも被災地のために何かをしたいと関わってくれる者がいること、子どもの貧困、教育格差に取り組みたいという熱い学生がいることは、この9年間変わらないチャンス・フォー・チルドレンの財産です。
最後になりましたが、この9年の中における最も大きな変化は、こんなにも支援の輪が広がり、応援してくれる方々が増えたところだと感じています。前述したクーポンを届けられることも、その子どもに多様な選択肢を提供できることも、このような支えがあってこそ成り立つものです。また一方で、この9年間、子どもたちやこの課題に貢献したいと関わってくれたサポーターの方々の思い、熱量は、全く変わらないものがありました。正直なところ、思うような結果が出ないことも、自分たちの方向性はこれでいいのかと悩むこともありましたが、その度にサポーターの方々の存在や言葉に励まされ、勇気づけられてきました。ぜひこれからも、私たちと共に、子どもたちを温かく見守っていただければ幸いです。
10年目のハタチ基金、そして、チャンス・フォー・チルドレンをどうぞよろしくお願いいたします。