2019.11.22
東日本大震災以降、被災した地域では、地域の若者の人口流出が大きな課題となっています。さらに、地元の就職先の減少に伴い、地域の担い手不足も深刻です。これから社会に出て活躍する高校生世代が、地元産業に触れる機会や地域との接点を持つ機会が少ないことも原因になっていると言われています。今回は、その課題を解決へと導くために活動をするNPO法人かぎかっこPROJECTの取り組みをご紹介します。
NPO法人かぎかっこPROJECTは、2021年度にハタチ基金の助成先団体となり、被災した地域の高校生が地域の大人を通して、地元産業について学んだり地元の魅力を知ることで、地域の担い手となっていくことを目的とするプログラムを提供しています。
先日行われたインタビュー形式の中高生を対象としたプログラムでも、生徒間で様々な気づきや発見が生まれたそうです。NPO法人かぎかっこPROJECTの神澤祐輔代表からの報告です。
この度、皆さまのご支援のもと、地域の担い手発掘・育成プログラムを岩手・宮城・福島の3県で実施しました。
本取り組みは、中高生が地元の働く大人にインタビューを行い、地元理解を深めるとともに若者と地域の接点をつくり、そこから地元産業について学ぶことを目的としています。
東日本大震災以前より地方の担い手不足は課題にありましたが、近年ではUターン・Iターン人口も増えるなか、いま地域で暮らす中高校生世代が身近にある様々な仕事や産業に触れ、地域との接点を持つことが今後の地域の未来に大きな力をもたらすと考えます。
今回は宮古市、盛岡市、石巻市、白河市からは高校生が参加。女川町からは中学生が参加し、延べ500名ほどの生徒が、20社にご協力をいただきインタビューを行いました。
普段は学校の先生や家族としか大人と接することがない中高生にとって、初対面の大人に質問をし、話かけるということは彼らにとって難しいことです。事前に活動の中でたくさん質問を考え、インタビュー中の表情やリアクション等も練習して本番に臨むのですが、中高生たちはどこか緊張した様子を隠せません。そんな初々しさも地元の大人の方々は優しく受け入れて、お店の中を見学させてくださったり、お店の方から中高生へ質問してくれたり、お土産を持たせてくれたりと、若者を歓迎・応援する姿勢を感じます。
インタビューを終えた中高生たちは「緊張したけどたくさん話が聞けて良かった」「こんな素敵な大人が地元にいるなんて知らなかった」「他のお店にも話を聞きに行ってみたい」と前向きな感想を挙げる参加者も多く、こうした経験が地域の中でたくさん行われることが、いずれ「あそこでこんなことやったなあ。あの人いい人だったなあ」と、地元を振り返る思い出のひとつになります。
インタビューを受けた地元の大人の皆さんも「普段中高生と話す機会がほとんどないので来てくれて嬉しかった」「この前インタビューに来た子たちは元気?」など、若者との交流を前向きに捉え、気にかけてくださいます。
こうしてお互いの心に思い出として地域が残るためには、顔が見えて、声が聞こえて、一緒に笑い合える距離感が一番必要です。この時代、たくさんの方法で情報収集ができますが、情報ではなく感情を共有できるからこそ、心に残る思い出、そして誰かに伝えたくなる自分の想いに変わるのです。
私たちは、これからも地方で暮らす若者が地元の良さに気づき、毎日を肯定して、楽しく生きるためのヒントを、取組を通して伝えていきたいと思います。そして、若者と一緒に東北を盛り上げていきたいと思います。今後とも応援よろしくお願いいたします。