2020.01.09
ハタチ基金の助成先団体、キッズドアでは、震災の影響を受けた世帯、並びに経済的に困窮している世帯の中高生を対象に、無料学習会を開催してきました。震災から10年が経ちますが、経済的格差や地域間の格差が、子どもたちの学習環境に影響を及ぼしています。
今回は、震災直後から現在まで、どんな形で東北の子どもたちを支えてきたのか。震災から10年経った今、どのような形で必要とされているのかをご紹介します。
■被災地支援10年 子どもたちの学習面を支えたのは多くのボランティアたち
キッズドアは、震災直後より東北に入って被災3県で学習支援をスタートさせ、今年で10年目を迎えました。現在は宮城県仙台市と南三陸町に拠点を構え、中学生から高校生までの子どもたちへ学習支援や居場所支援を行っています。
仙台では、高校生向け学習会「ガチゼミ」を行い、大学生の受験対策支援や、高校中退防止支援を行っています。さらに、中学3年生向けには、受験対策講座「タダゼミ」や、中学1・2年生向け学習会「タダゼミJr. 」を行い、家庭環境に関係なく、どんな子どもにも学習の場の提供できるように活動しています。
(写真)「English Drive」といった、学齢に合わせた英語学習会も毎週開催
また学習支援の機会を増やすため、自習室事業も行っています。複数の学習会を掛け持ちで受講する子や、中学時代から高校卒業まで長期にわたり継続して利用する子が増えており、各学習会の出席率も年々向上しています。
現在では震災の直接的影響を受けて困窮しているという方はほとんどいなくなりましたが、発達障がいや不登校など様々なご事情を抱えているご家庭からの利用依頼が増えています。そのため、2020年度からは不登校児のための学習会「HOPPER」をスタート。一人ひとりの事情に合わせた個別サポートを行っています。
(写真)「E-Drive南三陸」での学習
仙台と同様に、南三陸町でも、中高生向けに学習支援を続けています。2017年に志津川高校に設立された公営塾「志翔学舎」の運営を行うとともに、中学生向けの学習指導や、高校受験対策も開催して、多くの子どもたちが希望する進路を目指して勉強をしています。
子どもたちに勉強を教えているスタッフの中には、ボランティアで支えてくれている大学生や社会人の方々がいます。私たちキッズドアの職員だけでは広範囲における子どもたちの支援ができない中、たくさんのボランティアによって運営することができています。
(写真)タブレットを使ったAI教材での学習サポート
■支えるのは学習面だけではない
キッズドアでは、学習サポート以外にも力を入れていることがあります。進学先や、就職先について考える機会として重要な「キャリア教育」です。
普段子どもたちが接する機会のない東京の企業の方々に、ビデオ会議システムを使ってオフィスツアーを開催していただいたことも。さらには、社員の方々の進路選択体験談を聞かせていただいたりすることで、子どもたちの選択肢が大きく広がっていることを実感します。
身近な存在も進路に置いて重要な役割をはたしています。毎週勉強を教えてくれているボランティアスタッフたちです。大学ではどんなことを学んでいるのか、会社ではどのような仕事をしているのかなどを、質問する機会も定期的に作っています。長きにわたり子どもたちを見守ってくれているボランティアから具体的なアドバイスをもらうことも多く、進路に悩む子どもたちにとって心強い存在となっています。
昨年は新型コロナウイルスの影響で、例年通りには開催できなかった行事もありました。体験活動やイベントは、通常の学習会では見られない子どもの意外な一面を知ることができ、成長の瞬間にも立ち会えるので、感染対策を行いながらできるだけ実施していきたいと思っています。
急速に変化する社会の流れに子どもたちがしっかりついていけるよう、「自分で考えるチカラ」「未来を想像する力」「スピード感をもって対応できる力」を身につける機会を作り、これからも子どもたちをサポートしていきたいと思います。
(写真)多くの企業の方々から、食品寄付を始めとする寄付をいただいて活動できています