2020.04.21
ハタチ基金の支援団体の一つである公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(以下CFC)は、世帯の所得による学習機会の格差をなくすため、経済的に苦しい家庭の子どもに学校外教育バウチャーを提供し、学びの機会を作り出しています。
そんなCFCのクーポンは、学習塾だけでなく、スイミングやピアノといった「習い事」にも使うことができます。その理由とは?
CFCのブログ記事からご紹介します。
「CFCのクーポンは、なぜ学習塾以外にも使えるんですか? 習い事は贅沢だと思うのですが・・・」
日ごろ活動をしていて、このような質問をいただくことがあります。
こんなとき、CFCは習い事等による【非認知能力の向上】の話をすることが多いです。非認知能力とは、学力以外の力、例えば、やり抜く力や勤勉性などを指していて、非認知能力と将来の所得との相関は、近年研究でも明らかになっています(参考「非認知能力と子どもの貧困」)。
ただ、活動をしていて、子どもたちの状況は本当に様々で、理屈だけでは表現しつくせない点が多いと感じます。今回は、あえて事例をもとに、学習塾以外の学校外教育の重要性をお伝えしたいと思います。
■子どもの多様性とニーズの多様性
知っている方も多いと思いますが、じっとしていられない、コミュニケーションが苦手、読み書きが極端に苦手・・・そんな発達の凸凹を「発達障害」と言います。
以前、発達障害のある中学2年生の男の子の保護者さまから、こんなお手紙をいただいたことがあります。
現在、息子は、クーポンを利用してスイミングを習っています。息子には、障害があり、友達も作れず、療育も途切れてしまいましたが、スイミングは彼の居場所の一つとなっています。本人も私も不安ですが、勉強も頑張ろうと話しています。夢に少しでも近づければ嬉しいです。
このほかにも、発達障害のあるお子さんの保護者さんからは、様々な声が寄せられています。
「ピアノを習うようになって、最近は1曲ひく間、じっと座っていられるようになりました」
「手に職をと思い、思い切ってパソコン教室に通ってみることにしました。興味を持ってくれてよかったです」
このような声を聴いていると、「子どもが教育事業者を選べる」というクーポンの仕組みが、うまく活かされていることを嬉しく感じるとともに、子どもたちは本当に多様で、ひとりひとりの成長には、学力の向上だけでなく、様々なニーズがあることに改めて気づかされます。
■習い事自体に特別な想いを持っているケースも
また、子どもが習い事自体に特別な想いを持っているケースもあります。
宮城県に住んでいる高校1年生の女の子は、東日本大震災での被災でお父様を亡くされました。彼女は現在、クーポンを使ってピアノ教室に通っていますが、ピアノを始めたのは、亡くなったお父様がピアノを弾いていた影響があったそうです。
そんな彼女は、「私にとってピアノは嫌なことを忘れることが出来たり、気分転換になったりと、生活に欠かせないことだし、夢中になれること」と表現しています。将来はどんな形でもいいから、音楽に関わる仕事につきたいと言っています。
背景こそ知らなければ分からないことですが、習い事自体が、子どもたちの心を支えるものにもなりうるのだと気づかされた一例でした。
■信頼できる大人との出会いが支えになる
CFCのクーポンを使っているお子さんではありませんが、子ども向けの自然体験活動(キャンプなど)を企画している団体の方から、以下のような話を聞いたことがあります。
「小学生のころ、よくキャンプに参加していたAくんは、中学に進学し、不登校になりました。しかし、ある日、Aくんは突然「小学生の時に参加していたキャンプのリーダー(活動中に面倒を見てくれるお兄さんお姉さん)に会いたい」と言いだしました。団体のスタッフが早速Aくんに会いに行ったところ、Aくんはとても喜んでくれました。それから、団体は継続してAくんの様子を見守っています」
この話を聞いて、Aくんにとって、キャンプで自分の挑戦をいつも応援してくれる大人がいたこと、そして、その人たちがピンチの時に駆けつけてくれたことは、このさき本当に大きな励みになるだろうと感じました。
加えて、子どもに変化が起きたとき、家族だけで抱え込まないことは大切です。家族ががんばりすぎた結果、体調を崩したりして、事態を複雑で深刻にしてしまうことがあるからです。この意味でも、この団体が家族とかかわりを持ち続けることは重要だと思います。
今回ご紹介したのは、発達障害のある子どもや、親御さんを亡くされた子ども、不登校の子どもなどのケースのため、あくまで特殊な事例だと思われるかもしれません。ですが、実はどんなお子さんでも、ひとりひとり特性や背景は異なり、状況もニーズも様々です。
そんな多様な子どもたちが自身の状況に合わせて、クーポンの利用先を自由に選び、生きていく上での肥やしとなる経験ができるよう、これからも活動を続けていきたいと思っています。
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